近所でお昼を食べた帰り道、車を運転していると隣に乗っている相方が突然「あ!矢野さんがいた!」と絶叫。矢野さんって「杜人」の矢野智徳さん?いやいやいや、こんなうちの近所で環境改善しておられるはず…と思いつつ徒歩で引き返してみたら矢野さんでした。
何を隠そう、つむぐ食堂の環境整備を行ってくれたWAKUWORKSさんは、矢野さんの下で長年経験を積んで来られた職人さん方が興した会社。「かくかくしかじかでうちも大変お世話になったんです、ここから徒歩1分ですしコーヒー淹れますからぜひいらしてください!」とやや強引にお誘い(お仕事中すみませんでした)。矢野さんご本人を自宅にお招きできる日が来るとは思いませんでした。
伺ってみると、なんと10年ほど前、ご近所さんの別荘に道路から流れ込む大量の雨水を、その敷地内でうまくいなしてすぐそばを流れる川に合流させる施工をされたとのこと。今回はそのメンテナンスで来られたそう。
図々しくも一服された後に現場にお邪魔し、矢野さんがお弟子さん達に向けて実際に手を動かしながら説明されている内容を伺っていると、もう徹頭徹尾「自然が主、人間が従」。お弟子さん達が一通り刈り終え、一般的な感覚からすると「これで刈ったの?」と思われるであろう仕上げでも矢野さんにしてみれば「刈りすぎ」。
「重たくなり過ぎているところ、密になり過ぎているところに風を通してやる。昔通した水脈の上を中心に風が通るように少し刈ってやるだけでいい。そうすると地中と地上の間で循環するようになる。そうなればあとは自然が自分の力でうまくまとめてくれるから。」
「抑えなきゃいけないのは自然じゃないんだよ。抑えるべきなのは人間の方。人間の都合でやらない。刈りたいと思ったところをぐっと我慢して、そうだな、5割でいい。そのあと周りの風景と馴染むように1〜2割手を入れる。それで充分。」
「蔦も蔦で役割があるからここに生えてきてる。蔦だからといって目の敵ににして全部とっちゃわなくていい。重くなっているところ、密になっているところをすいて風が通るようにする。蔦も秋になれば紅葉して風情が感じられるんだから。」
10年前に施工されたという川の石の配置もそこに続く枯れ沢も地中の水脈も驚いたことにきっちり機能していて、その周辺だけ明らかに植生が異なっている。そして翌日現場のお庭を拝見した印象はとにかく「自然」。石の配置もそうだけど、本当に何の違和感もなく見事に周囲の風景に溶け込んでいる。現場の周りにもキレイなお庭もたくさんあるけれど、ここまで自然な仕上がりのお宅はちょっとない感じ。
「自然が主、人間が従」の原則を現場の作業に徹底的に落とし込むと、草刈り作業一つがここまで深く自然と繋がるものになるのか…と圧倒されました。
それにしても越してきたすぐご近所で10年も前から環境改善に取り組んでいた方があったとは…私たちが八ヶ岳のこの土地に移住してきたのは、自分たちで選んだつもりで実は土地に呼ばれて来ただけかもな、なんて夫婦二人で話しあってしまうような、よもやよもやの出来事でした。
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